マンガレポート 海外投資への道
南アフリカ 後編 ~アフリカ大陸のリーダーへ! これからの展望~
【前回までのあらすじ】
南アフリカは近代的でグローバルな国だと知ったナガイ。しかし、南アフリカならではの課題もたくさんあるようで...? シリーズ最後の取材も、いよいよ大詰め!


トピック3「地域間格差の実態とは?」

- 都市部は近代的って話でしたが、農村地域はどうでしょう?
- 農村地域はまだまだ貧しいです。働き盛りの若い人はみんな都市部に出稼ぎに行くことが多いので、お年寄りと子どもばかりで...。生産性がとても低く、自給自足が精一杯なのが現状です。
- 自然豊かな土地なのに。
- もともとアフリカ大陸は土壌の養分が貧しく、農業に不向きな地域です。それに輪をかけて、土や水の条件を良くする肥料や技術も普及しておらず、生産性が低いままなんです。
- そうなんですね。でも、南アフリカってワインが有名ですよね! お酒好きとしては、見逃せませんよ!
- もう、ナガイさんはそればっかり...(呆)。
- ケープタウンの後背地は、地中海にそっくりな気候で、ワインを作るのにとても適しているんです。その場所に白人たちが入ってワイン産業を始めたんですが、今では南アフリカワインは安定した産業になりました。
- だから、おいしいのね~。
- でも、それは例外で、南アフリカはまだまだ農業が立ち遅れています。工業化のなかで農村人口が減り、皮肉なことに民主化後、小麦を大量に輸入しているんです。
- 若者も農業はやりたがらないんですね。
- 農業人口比率は先進国と同じ程度なんですけど、国の所得レベルとのバランスを考えると、農業雇用はもっと高くてよいと思います。小麦を自給できればその分農村の所得が増え、外貨の節約にもなるでしょう。黒人農家が育てば失業率も下がり、貧富格差も解消していくはずなんです。日本もたとえば肥料生産や農産物流通を支援していけば、それを助けられます。
トピック4「汚職一掃、クリーンな政府で国も安定??」
- アフリカ大陸の国々の政治面ってけっこう不安定な印象があるんですが、南アフリカはどうなんですか?
- 南アフリカもちょっと前までは不安定でした...。前ズマ政権が大規模な汚職に手を染め、南アフリカのガバナンスはボロボロになりました。結局ズマは辞職に追い込まれ、ネルソン・マンデラの右腕と呼ばれたラマポーザが、現在大統領として立て直しを図っている最中です。
- どのような方なんですか?
- 国民からの人気もあり、政治手腕に優れた、クリーンな政治を期待できる人です。私は20年以上前、南アフリカの大学に所属してこの国の民主化の様子をみていましたが、彼の手腕はとても印象的でした。
- 具体的にどのような策をうちだしているんでしょうか?
- 現在、南アフリカ国債の価値が著しく低いため、国を挙げて格付を高めようとしていますね。2018年から5年間で1,000億ドル(約10〜11兆円)の投資を呼び込む計画を進行中です。そのために、海外の国々に南アフリカの投資環境をアピールしています。
- 1,000億ドルはすごい!
- ちなみに、いくつか日本の企業もその計画に投資していますよ。
トピック5「成長のカギはアフリカ大陸回帰!」

- 最後に南アフリカの将来についてお聞きしたいのですが?
- 経済的なところでいうと、今の南アフリカ企業では、アフリカ回帰が起こっているんですよ。
- 回帰?どういうことですか?
- 前編でお話しましたが、南アフリカの企業はヨーロッパなどで影響力を持ちながら、グローバルに活躍してきたのですが、今は、アフリカ大陸での事業比率を高めていこうとする企業が増えているんです。たとえば、南アフリカ最大の医療会社はイギリスでも首位で、ヨーロッパでの拡大を進めていましたが、現在はアフリカに集中すべく舵を切っています。
- グローバルなだけでは儲からないということですか?
- ヨーロッパなどの市場は成熟しきっているので、伸びしろがないというのが理由のひとつですね。だったら、まだまだ市場が未熟なアフリカ大陸での影響力を高めていくことが将来的な成長につながり、グローバル競争で優位に立てるという考え方です。
- なるほど!
- 南アフリカをはじめ、アフリカ各国でBOPビジネスという低所得者層向けのビジネスが展開されてきましたが、BOPビジネスを一言でいえば薄利多売です。それをアフリカ大陸全土で展開していけば、人口が多いので安定したビジネスになり、他社はなかなか参入できないでしょう。
- どんどん成長しそうですしね。
- あと、BOPビジネスって市場の育成もセットにしないといけません。だから南アフリカ企業としては、アフリカ大陸のリーダーとして他の国の発展を支えながら、自分たちも成長していける可能性があります。南アフリカにとってみれば、アフリカ全体の発展がカギになるのです。
- 注目すべきは、アフリカ大陸の他の国々だと言う事ですね。
- BOPビジネスだけでなく、アフリカ全体でITベンチャーのスタートアップ企業が増えてきているので、その流れにも乗りながら、アフリカ全土で影響力を高めていこうと考えているはずです。
- そっか、他のアフリカ諸国と比べて、大学進学率も高いし、教育制度は充実してますもんね。
- 強みを徹底的に伸ばして、そのなかで弱点の克服を図る。弱みに拘らずリスクをとる。これが南アフリカの考え方です。失敗もするけど大勝もする。アフリカ的じゃないですか!



- ナガイさん、最後のレッスンです! 最後のテーマは「国際分散投資」!もうわかりますよね?
- わたしを甘く見ないでもらいたいな!えーと...(ノートをガサゴソ)
- まさか?
- 国際分散投資とは、株式・債券などの資産の種類、先進国・新興国など投資する国や地域を分散しながら投資をしていくことです(ドヤ顔)!
- すごいじゃないですか! ナガイさん! まるで教科書を読んでいるかのような模範解答!
- カンニングがバレたか...!でも、いろんな国に投資を分散していけばリスクを分散できるんだよね。これまで取材してきたから、身にしみてわかる。その国に何が起こるかわからないからね。
- そうです。これまで取材してきた国も、日本だって、来月には全然違う状況になってしまう可能性がありますからね。
- ブラジルとかイギリスも今後どうなっていくのか心配だよ〜。でも、どの国もすごく伸びる可能性だって秘めてる!
- そのためにも国際分散投資という考え方は大事なんです!凸と凹を補って、安定的な成長を目指す。
- 私達みたいにね。マビーちゃん、今までたくさん助けてくれて本当にありがとう(涙)。
- こちらこそ(涙)。また、機会があれば凸凹コンビ復活したいですね。
- やっぱり、凹って思ってたのね...。
- (笑)
- (おしまい)


編集後記
どうも!イラストレーターのナガイクミコです。
「マンガレポート海外投資への道」を読んでくださり、ありがとうございます。
外国の経済や政治のことについて漫画を描かせていただくのは始めてだったので描けるのか心配で、人選ミスではないのかとか、お引き受けするのを悩んだりしました。しかし、三井住友銀行さん始め、影から日向から力強く支えてくださった全ての関係者の皆さまのお力添えのおかげで、無事に最後まで描き終えることができました。心より深く御礼申しあげます。
もっときっちりみっちりしっかり勉強して海外投資にチャレンジして大儲けしてやろうと思います!
お金持ちになってやるぅー!!また、どこかでお目にかかれたらと思います!!本当にありがとうございました!
それではーーー!!
2018年12月 イラストレーター ナガイクミコ


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平野 克己理事(日本貿易振興機構)
早稲田大学院経済学研究科卒。グローバルスタディーズ博士(同志社大学)。アジア経済研究所勤務を経て2015年10月よりJETRO理事。アフリカ研究の第一人者として活躍中。『経済大陸アフリカ』(中公新書、2013年)など著書多数。
趣味:美術館巡り、温泉巡り
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ナガイクミコ(イラストレーター)
押しに弱い普通の日本人。どうせ一生独身なので、20年後くらいに海外移住してみたいという夢を漠然と持っている。
特技:マンガやイラストを描くこと
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マビー(マネービバ編集部の敏腕編集者)
帰国子女で日米のハーフ。しっかり者。親の仕事や留学などで、子どもの頃からいろいろな国に住んだ経験がある。
特技:英語など数カ国語を話せること
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編集長(マネービバ編集部の偉い人)
若い頃は、とてもモテたらしい(本人談)。50代相応の落ち着きはあるが行動が突飛で謎の多い人。
特技:投てき(名刺/ダーツ)

- 【監修】
- 馬渕 治好(まぶち はるよし)
ブーケ・ド・フルーレット代表。証券アナリスト。
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