HOME > みんなのマネーニュース > 今よりアップする!? 見直される離婚後の「養育費」

みんなのマネーニュース 
~私の暮らしはどう変わる?~

2019.12.4

#16 今よりアップする!? 見直される離婚後の「養育費」

離婚の際に夫婦で取り決める子供の「養育費」について、見直される動きがあります。現状のルールで算出する金額が低いという意見などを受けているためです。
どんな影響が起こりうるのか見ていきましょう。

低すぎた?裁判所算定の養育費

民法では、子どもと離れて暮らす親に、配偶者や子に対して自分と同程度の生活水準を保障する義務(生活保持義務)を定めています。

これに基づき、離婚した夫婦のうち、経済的・社会的に自立していない子と離れて暮らす親が支払う費用が「養育費」です。

養育費は、子どもを育てるのに使われる費用で、子どもが成人もしくは大学を卒業するまで支払われるのが一般的です。

養育費の額は離婚の際に夫婦間の話し合いで決めますが、まとまらなければ、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。

かつては、それぞれの家庭ごとに諸事情を考慮するため、金額算出に時間がかかっていました。
しかし、2003年に東京・大阪養育費等研究会が発表した「簡易算定方式」により、養育費の算出が簡単に、早くできるようになりました。

離婚調停の際に、早期の問題解決 につながるとして広まり、定着しています。

図1 簡易算定表

この簡易算定表は、簡易算定方式に基づいて、義務者(支払う側)と権利者(受け取る側)の収入差や、子供の年齢・人数による養育費の目安を示したものです。

例えば、夫(義務者・支払う側)が年収800万円、妻(権利者・受け取る側)200万円の夫婦で、子どもが014歳の場合は、月68万円が目安額として示されています(図のマーク参照)。

※どちらが義務者でどちらが権利者になるかは、双方の話し合いで決定します (親権・監護権をもつ方が権利者になります )。

簡易算定方式では、夫婦の総収入から税金や経費 (住居費、保険料などの固定費や、被服費、交通費、交際費など仕事上必要な費用)を差し引いた金額を「基礎収入」として費用を算出しています。
基礎収入は総収入の4割程度のため、そこを基準に算出する養育費は、どうしても低くなりがちです。
そのため、子どもにかかる教育費などが十分に賄えないという声もあります。

また、2003年に制定されて以後、税金や社会保険料の増加・物価上昇なども反映されていない、という指摘もあります。

図2 簡易算定方式の算定イメージ

基礎収入を、生活費指数※を用いて扶養義務者と子ども分に按分した後、「子ども分」を夫婦それぞれの基礎収入で按分し、算出。 (「養育費・婚姻費用の 新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言」をもとに筆者作成) ※「生活費指数」とは、世帯収入を、世帯を構成する人にどのように割り振るかを示す値です。親を100とすると、0~14歳までの子は55、15~19歳までの子は90となります。

前出の例でいうと、離婚して妻が子どもを引き取った場合、それまでの世帯年収1,000万円の暮らしから、離婚後は、世帯年収約319万円(自分の年収200万円+養育費8万円×12カ月+児童扶養手当19,110×12カ月)の暮らしになります。

※上記の金額はあくまで一例です。詳しくは専門家にご相談ください。

なお、児童扶養手当は、ひとり親世帯の生活安定と自立を助け、児童の健全な育成を図るために地方自治体から支給される手当です(配偶者からのDVなどで裁判所からの保護命令が出された場合は、離婚前でも支給対象)
所得によって変動し、受給開始から5年または支給要件を満たしてから7年を経過すると、条件によって手当の一部が支給停止されます。

世帯年収が下がる中、これまで同様に子どもの習い事や塾にお金をかけるのは厳しく、高校・大学などの進路も選択肢が狭まる可能性があります。もちろん、生活の質も下がることになるでしょう。

「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」(2016年度)によると、母子世帯の平均年収は243万円(養育費や手当含)、父子世帯は420万円。

特に母子世帯では、女性労働者の賃金の低さと相まって貧困が深刻な社会問題となっており、養育費の見直しが求められています。

最高裁が養育費の見直しに着手

201611月、日本弁護士連合会が「新算定表」を発表しました。増税や物価上昇、教育費の上昇、可処分所得の低下などの実情に即し、子どもの利益に配慮した新たな算定方式です。

総収入から差し引く経費に、住居費や保険料などを含めないことで、基礎収入は総収入の67割程度となり、算出される養育費は、簡易算定方式の1.52倍に増えます(3)

図3 新旧算定表による養育費の違い(12歳の子ども1人の場合)

出典:日本弁護士連合会「養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言

しかし、協議離婚(夫婦が協議して合意の上で離婚すること)は別として、実際に養育費を決定する裁判所では、今も多くのケースで簡易算定方式が参考にされています。

こうした状況の中、ついに20187月から最高裁の司法研修所が「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」を始めたとの報道がありました。この研究報告がまとまれば、一定の指針になると期待されています。

私たちの暮らしへの影響は?

簡易算定方式で算出する養育費では、生活や教育の質を下げざるを得ないと問題視されるなか、算定方法そのものが見直されれば大きな反響を呼びそうです。

一方で、養育費が上がると、支払いが難しくなる義務者もいるかもしれません。
「平成28年度全国ひとり親世帯等調査 」(2016年度)によると、母子世帯の42.9%、父子世帯の20.8%が養育費について支払いの取り決めをしていますが、それ以外の世帯では取り決めも行われていません。
また、「現在養育費を受けている」母子世帯は24.3%、父子世帯は3.2%にとどまっています。
取り決めをしていても、不払いの場合もあるということです。

養育費が上がると、不払いがさらに増える可能性も指摘されており、難しい問題でもあります。
そのため、養育費の増額と並行して、不払い解消についても議論する必要があります。

研究結果はいつ発表されるのか、算定方式はどう変わるのか、しばらく気になるところです。

3組に1組が離婚する時代の今、万一の場合に備え、コツコツと資産形成をしておくことも大切です。

※ 2019年12月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

豊田 眞弓(とよだ まゆみ)
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、相談診断士。FPラウンジ代表。マネー誌ライター等を経て、94年より独立系FP。現在は、個人相談のほか、講演や研修講師、マネーコラムの寄稿などを行う。6カ月かけて家計を見直す「家計ブートキャンプ」も好評。短大非常勤講師も務める。「50代・家計見直し術」(実務教育出版)など著書多数。座右の銘は「今日も未来もハッピーに!」。